ヒラエッセイ
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2005年1月24日(月) 入院
近所に住むSさんが入院した。体調の不良を訴えたSさんを奥さんが主治医見せると、主治医は「入院の必要がある」とSさんと奥さんに告げた。どうやら脳の病気らしい。
主治医は町の開業医だから入院設備など持っていない。そこで、SさんはTA病院に入院することになった。
日曜日の朝、10時過ぎまで寝ていた僕は郵便受けに手紙をとりに、外に出た。門の外ではSさんの奥さんを交えた近所のおばさんたちが輪になって井戸端会議をしていた。もちろん、今日のメインの話題はSさんの入院だった。
「それで大丈夫なの?」
と、Nさんが心配そうに訊いた。するとSさんの奥さんが答えた。
「あまり良くないの。入院したときよりも、さらに悪くなっている感じで」
それを聞いて、気の毒そうな顔をするNさん。
するとそこで、KさんがSさんの奥さんに言った。
「あたりまえよ。あの病院は入ったら出てこられないって昔から言われてるのよ。あんな病院に入れたら殺されちゃうわよ。悪いことは言わない。ご主人が大事なら、転院したほうがいいわよ!」
それを聞いたNさんとTさん、そしてSさんの奥さんは「はてな?」という顔になって会話が止まった。でも会話が止まったのは一瞬で、それからはまた何事もなかったようにおばさんたちの井戸端会議は続いた。
「そういえばKさんちのおばあちゃん、3年前にTA病院したまま葬儀場に直行だったわよね! どうしてあの時は他の病院にしなかったの〜う?」
なんて、誰も言わないのであった。